巨核球分化と血小板形成の分子機構
 
 血小板は止血機構に重要な細胞性血液成分であり、その減少や機能低下は出血傾向をもたらし、その機能亢進は血栓症を引き起こし、いずれも即時に致命的となる重篤な状態を招来しうるものです。また近年、炎症、免疫応答、がん細胞の転移、切除肝の再生など、多様な生命現象における血小板の重要性が報告されています。したがって、血小板の数と活性を適切な範囲で調節することは、生体にとって非常に重要です。
 従来、血小板減少や機能低下に対しては、「いかに血小板を増やすか」という問題意識のもとに、巨核球分化と血小板産生機構の研究が進められてきました。一方、血小板機能亢進に対しては、「いかに血小板活性化を制御するか」という問題意識のもとに、循環器疾患の観点から研究が進められてきました。私たちは、巨核球造血と血小板産生と血小板機能の制御を一貫する視点から捉え直し、そこに潜む新しい制御機構とその破綻による病態の解明を目指して研究を進めています。特に、巨核球・赤血球系前駆細胞(MEP細胞)から巨核球への分化の方向決定に重要な転写因子c-Mybと、巨核球の成熟と血小板産生に重要な転写因子である転写因子NF-E2に着目しています。これらの転写因子の機能を理解することにより、巨核球分化のスイッチ、成熟巨核球からの血小板産生のスイッチを明らかにすることができると考えています。血小板製剤にかわる試験管内での血小板大量産生にむけた基礎研究と位置づけています。

 

 

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